【歌詞】
まだ何者でもなかった 若かったあの頃
真っ赤なMR2 お前とのドライブデート
ミッドシップの鼓動 狭い助手席で誓った
「結婚しよう」
青い夢を燃料に 海沿いの道を
朝まで駆け抜けていた
小さな命を授かり 俺はスポーツカーを降りた
初めてのミニバン 白いイプサムのチャイルドシート
バックミラー越しに見る 眠るセリカの寝顔
そのたびに感じてた 重い責任と
言いようのない喜びを
セリカが成長するたび 車は大きなノアに変わった
思春期のセリカはイヤホンをつけて
「別に」と 窓の外を見てた
無視される寂しさに 気づかぬふりした雨の夜
セリカの部屋が ガランと空いた春の日
「もう大きいのはいらない」と おまえは言うけれど
それでも俺は エスティマを選んだんだ
いつかセリカが一緒に乗ってくれるかもしれない
夢の残り香が まだ車内に漂っていた
そして定年 人生の集大成
白のランクル 営業マンに勧められるがまま
ハンコを押した残クレ モデリスタをフルに纏い
電動ステップが降りるたび 格好がついたと信じ込んだ
俺の最後のプライド 雪道も林道も走らせない
傷一つつけられない 週末ひたすら泡で磨く
心の穴を埋めるように
それが俺のステータス それが人生の格だった
ある日 セリカが連れてきた
さえない男は「フリーカメラマン」
理解不能な異星人
おまけに愛車はスバルのブルーインプ
トヨタ一筋の俺には耐えがたい
「こんな奴にセリカを渡せるか!」
不機嫌な俺をよそに 運命はカチリと音を立てた
「めしに行こう」と乗り込んだランクル
まさかのバッテリー死
洗車ばかりで走らせてこなかった
俺の人生そのもののように
屈辱抱えて 奴のインプレッサに乗り込んだ
峠のカーブ 吸いつくようなAWDの衝撃
奴の横顔に かつてのMR2で夢を追った俺を見た
助手席で笑うセリカが あんなに幸せそうな顔をしてるのを
俺はいつから 見落としていたんだろう
ランクル親父 鉄壁のプライド 崩れ去る壁
ブルーインプが 忘れていた「道しるべ」を照らす
青い風が吹き抜けていく
俺の心に 新たなエンジンの鼓動が鳴り響く
暗い書斎のモニターが照らす 俺の知らない
青いこたえ
背中越しに「何してるの?」と覗くおまえに
「……ああ、バッテリーを 探してただけだ」